根管治療とは
根管治療は、歯髄を十分に洗浄・消毒をした後、蓋をするといった一連の処置のことを指します。一般的には歯髄の中にある神経を抜くなどの処置が最初に施されますが、根管治療全体としては手間のかかる治療であり、東京医科歯科大学の発表では、「日本においての根管治療の成功率は30%から50%程度」とされています。このデータ発表から、根管治療の半数以上に再治療の必要性があるということになります。
再治療が必要になってしまう原因
根管治療をしても完治できていないことがあり、歯に炎症が起きてしまうケースがあります。これは、根管治療の際、根管内部の細菌を完全に除去できなかったために起こります。根管治療において、細菌の完全除去は難しく、先述したように成功率は半分以下というデータとなっています。
再度根管治療が必要になる症状は以下の通りです。
- ・根管治療後も歯に違和感があり、思うように噛めない
- ・痛みや腫れの再発
- ・痛みはないが歯肉から膿が出る
以上のような症状があれば根管の再治療が必要です。
日本と米国の根管治療の成功率
日本での根管治療の治療費は健康保険を適用した場合、3割負担だと2,700円程度となります。
一方米国の根管治療の治療費は1本で10万円~15万円、英国でも10万円程度が相場です。物価が安いといわれるフィリピンでも7万円くらいかかります。このことから、日本の健康保険制度は素晴らしい、ということになります。しかし、裏を返せば日本の根管治療の場合、治療費を安くあげるための“限られた範囲の治療”が行われているのです。根管治療の成功率が半分程度というのも、これを考えると理解できます。そもそも、日本の歯科治療技術は世界に遅れをとっているわけではなく、日本でも根管治療に手間暇をかければ成功率は上がると考えられています。
日本の健康保険の制度内では、根管治療の方法や使用できる材料、時間などにも一定のルールが定められています。そのルールに則って行われる根管治療では、前述の通り成功率は半分程度となってしまうのです。そのため、症状によっては十分な治療を受けられないケースも発生しています。
保険の根管治療と自費の精密根管治療の違い
根管内部まで確認できる「マイクロスコープ」
一方で、根管治療にマイクロスコープを使用することで、根管内の隅々まで確認することができ、見落とすことなく汚れの除去が可能となります。取り残しなどで痛みや炎症が再発することもなく、より正確かつ精密な治療をすることができます。根管内を拡大視できるマイクロスコープは、根管治療の成功率をあげるために欠かせない存在と言えます。
「ラバーダム防湿」を行い、細菌の侵入を防止
CT(3Dレントゲン)による三次元的な解析
「充分な治療時間」の確保
根管治療は、非常に精密な作業が要求されます。歯科治療の中でも時間のかかる治療の部類に入ります。より良い治療結果、根管治療の成功率を上げるためには、時間をかけた丁寧な治療が求められます。しかし、健康保険制度においては1回の根管治療にかける時間や費用の制約があるため、十分な根管治療ができないのが現実です。
ニッケルチタンファイルの使用
自費診療で使用されるニッケルチタンファイルは、固い性質がありながら弾力性もあり先端まで曲がるため、曲がった根管も隅々まで治療をする事が可能です。
使用する薬剤
根管の洗浄に使う薬剤は、NaOCL(次亜塩素酸ナトリウム)とEDTAがメインになります。塩素によって微生物を構成する細胞膜や細胞壁を壊し、タンパク質などを溶解します。人間には無害であり、水道水に使われている塩素と成分はほぼ同様です。EDTAはスメア層などの無機質を溶解する働きがあります。根管内が綺麗になると、神経の代わりに薬を詰めていきます。保険治療では、ガッタパーチャという細いゴムを詰めますが、生体適合性が低いため、歯根からはみ出てしまうと炎症を引き起こす原因になってしまいます。
自費治療の場合は、専用の薬剤で歯根を埋めていきます。使われる薬剤は、生体適合性が非常に高いものを使用することができます。主に使用される薬剤はMTAセメントというものです。これは、詰め物に使うケースが多い薬剤で、強い殺菌効果があるので菌の侵入や繁殖を防ぐ働きがあります。
根管治療後の被せ物
自費治療の場合は、土台の素材が金やグラスファイバーなどの樹脂になるので、歯に対して馴染みがよく、耐久性が良いのが特徴です。隙間も出来にくく、割れる心配もほとんどありません。また、被せ物についても透明感のあるセラミックや艶の出るジルコニアといった素材を使用するので、見た目の美しさ、強度、適合性、どれをとっても十分な素材となっています。
さいごに
保険治療と自費治療の違いは金額に大きな差があることですが、成功率の違いも見過ごすことはできません。保険治療での根管治療はその場しのぎにはなり、何度も再治療をする必要があるのが欠点です。生涯にわたって歯の健康を考えるのであれば、自費治療での根管治療を検討することを強くおすすめいたします。