歯を1本失ったところに、1本のインプラントを埋めて歯の根の役割(人工歯根)とし、その上に人工歯を装着する、という治療法が一般的に多く行われているインプラント治療です。
ところがこの方法では、全ての歯を失っている人(総入れ歯の人)やほとんどの歯がグラグラしている人の場合には、インプラントが多数本必要となったり、骨を増やす骨造成という処置が必要だったりと、時間的にも経済的にも体力的にも、とても負担の大きい治療になります。ですから、インプラント治療を望んでいても、入れ歯で我慢せざるを得ない人が大勢いました。
よく似ている治療法なのに名称が違っているため、歯科医師の間でも混同している人もいるようです。患者様には大変わかりにくいことでしょう。
ここでは、それらのあご全体のインプラント治療法の中で、一番著名なAll-on-4と、当院が行っているワンデイインプラント®について、同じところや違うところを解説していきます。
現在のインプラント治療の
誕生まで
歯科インプラントの歴史は古く、紀元数世紀頃の遺跡から歯の替わりに貝や動物の骨などが埋め込まれた頭骨が発掘されたという記録があります。古代から、歯を失って困っていた人類は、何とか噛めるようになろうと工夫していた跡が伺えます。
その後も石や金属など様々な材料や形のものが試されてきましたが、体内に埋め込まれたものを体は異物と判断し、うまく骨と結合しない例が多かったようです。
この発見は、1952年スウェーデンのブローネマルク教授によって偶然なされました。教授はこの発見を医学に生かすために様々に研究を重ね、チタンで人工の歯を再生させる歯科インプラント治療を開発、1965年に実際の患者様に手術を行いました。この患者様のインプラントは、2006年に亡くなるまで41年間機能し続けたそうです。
こうしてチタン製インプラントが安定して機能することが発表されてから、世界中に普及するようになりました。インプラント治療の成功率を高めるための研究も進み、あごの骨に埋め込んだ直後のインプラントには、強い力をかけない方が良いこともわかりました。ですから、インプラントを埋めた後、一旦歯ぐきを閉じ、3~6カ月待って骨と結合が確認できてから人工歯を装着するという2回法と呼ばれる術式が広まりました。
現在ももちろん、この方法が行われています。
あご全体の
インプラント治療の誕生
このように多くの歯を失った患者様にも、手術や治療期間中のストレスをなるべく軽くしてインプラント治療を行えないか、という研究が行われ、
- あご全体にバランスよく配置して埋められたインプラントが4本程度あれば、
ひと塊となったあご全体の人工歯(12歯分)を支えることができる - 骨に埋められたインプラントは、強過ぎる外力には弱いが、程よい力であれば
逆に骨結合が促進される
ということがわかりました。
これらの研究結果を踏まえて、全ての歯を失った人に、4~6本のインプラントをあご全体にバランスよく配置し、12歯分のひと塊の人工歯をその日のうちに装着するという治療法(※イミディエート治療と言います)が誕生しました。
※イミディエートとは「即時」という意味。インプラントの埋入と即時に仮歯を固定する治療法で、
イミディエート・ローディング(即時荷重)とか、イミディエート・ファンクション(即時機能)と呼ばれます。
All-on-4(オールオンフォー)とは
中でも最も有名になったのが、Dr.マロが提唱したAll-on-4です。
これは、「4本のインプラント(上あごでは6本の場合もある)に、12本全て(All)の歯を載せる(on)」という治療法を端的に表した名前です。
All-on-4の際立った特徴には、奥歯の部分の骨が薄い場合、インプラントを斜めに埋めて骨造成はしない、というルールがあります。奥歯の部分のあごの骨は、上あごには上顎洞という空洞、下あごには下顎管という神経の走行があるため、もともとインプラントを垂直方向に埋めるだけの厚みが確保しづらくなっています。
従来であれば、インプラント治療の前に骨移植や骨造成という処置を行うことが考えられます。しかし歯科医師にとっては難易度が高く、患者様にとっては治療期間の長引く負担の大きい処置です。これを避ける解決策として、斜めに埋める(傾斜埋入)方法が編み出されたのです。とても画期的なアイデアで、これにより治療が可能となる患者様の幅が増えました。
多くの先生がAll-on-4を取り組むことで、多くの患者様が救われました。
ワンデイインプラント®とは
またワンデイインプラント®️では、患者様の骨質や骨量の状態に応じてインプラントメーカーを選択したり、埋入するインプラントの本数も4~6本と幅を持たせたりと、患者様の症状に合わせて治療計画を柔軟に決めています。
インプラント治療に関する総合的な知識と技術が必要ですので、歯科医師の誰もが行えるというものではありません。難しい症例も含め様々なインプラント症例を行ってきたという、豊富な実績から培われた技術と知識が備わってこそ行える治療であり、個々の患者様に合わせたカスタムメイドな治療と言えます。
ワンデイインプラント®️と
All-on-4(オールオンフォー)の比較
ワンデイインプラント®️ | All-on-4(オールオンフォー) | |
埋入本数 | 4〜6本 | 4本(上顎6本の場合もある) |
骨造成 | サイナスリフトの併用 (臼歯部でも固定できる) |
骨造成なし (遠心部インプラントの傾斜埋入) |
初期固定値 | 低い初期固定値でも技術力でカバー | 35〜45Ncm |
使用メーカー | 幅広く対応 | ノーベル・バイオケア社 |
ワンデイインプラント®️の特徴
即時荷重治療法と
サイナスリフトの併用
最大の特徴は「即時荷重治療法」と「サイナスリフト(骨の薄い箇所に人工骨や自家骨を移植して厚くする治療)」を併用することです。
歯を失うと歯槽骨の吸収が始まり、インプラントを埋めようにも骨が薄くて埋められない場合があります。そのような時サイナスリフト治療を行い骨を厚くしてインプラントを埋めることが可能です。ワンデイインプラント®は、骨吸収の著しい患者様や骨質の粗造 な患者様など様々な難症例に対しても、「抜歯、骨造成、骨整形、インプラント埋入、仮歯の固定」までの過程を、1 日(ワンデイ)で行っており、All-on-4の適用が難しい症例にも対応しています。
医療面談に始まり、術後のメンテナンスまで含めたトータルな治療実施計画を設定し、患者様にも治療について理解と協力を得ることで多くの方々を成功に導いています。
中平グループだからできる
ワンデイインプラント®️
これは、長年インプラント治療の第一線で活躍してきた中平グループならではのノウハウがあってこそ実現できる物であり、ワンデイインプラント®️の成功率は一貫して高水準を維持しています。